QuadrigaCX の失われた ETH が見つかった件について

寄稿する予定で書いていたのですが、ポシャったので個人ブログで公開します。
QuadrigaCX の保有していた ETH などの資産について、CEO  Gerald Cotten氏が亡くなったため紛失したと言われていましたが、約60万ETH が見つかったというレポートがブログにて公開されました。
zerononcense が公表したレポートは、有名な Kraken取引所の Jesse Powell 氏が協力しているということもあり、十分なボリュームで解説されているため、少し見ていきたいと思います。
まず背景から。2月28日、Kraken 取引所の CEO はブログにて最大10万ドルにも及ぶ懸賞金をかけることを示しました。QuadrigaCX の顧客資金は 1億9000万ドルと見積もられていたことや、レポートでも触れられているように取引所で資金が保管されている見込みがあったことから、このような形に踏み切ったのでしょう。
実際、元社員などが、鍵や保管先の取引所一覧などを提供してくれるという可能性を考慮に入れていたと思います。
さて、その直後に公表されたレポートでは、12 の Ethereum ウォレットアドレスが記載されており、そのいずれも、QuadrigaCX の顧客のアドレスではないことが確認されています。
なぜアドレスが今になって見つかったのか、研究者が発見した情報について、順を追って見てみましょう。
レポートでは取引所におけるホットウォレット、デポジットウォレットの説明が含まれるものの、ここでは割愛します。
  1.  アドレス 0xd72709b353ded6c8068cc78988613587a4cae8de について
アドレス0xd72709b353ded6c8068cc78988613587a4cae8de は、Bitfinex のデポジット用ホットウォレットアドレスです。
一般に取引所は、アドレスを使いまわすことはあるものの、各顧客に対しユニークなデポジットアドレスを提供します。
  1. QuadrigaCX のホットウォレットアドレス
アドレス 0xb6aac3b56ff818496b747ea57fcbe42a9aae6218 は、QuadrigaCX のホットウォレットアドレスです。
このアドレスは宣誓供述書に基づいて確認されています。
  1. 大きな額のトランザクションを追いかける
アドレス 0x7ea5e875a386b66d11a0ad1866ca7b5f2745f049 からは、QuadrigaCX ホットウオレット 0xb6aac3b56ff818496b747ea57fcbe42a9aae6218 へのトランザクション 1 2 があります。
しかし、トランザクション 3 4 を見ると、同じアドレス 0x7ea5e875a386b66d11a0ad1866ca7b5f2745f049 から Bitfinex のデポジットアドレス 0xb6aac3b56ff818496b747ea57fcbe42a9aae6218 に対し、約1000ETH が転送されています。
  1. 考えられる可能性について
まず考えるのは、3. で見つけたアドレスが顧客のもの、つまり QuadrigaCX が生成したデポジット用アドレスではないか、ということです。
QuadrigaCX ホットウオレット 0xb6aac3b56ff818496b747ea57fcbe42a9aae6218 へのトランザクションが記録されていることから、顧客向けに生成されたデポジットアドレスかもしれないという推測が成り立ちますが、この説明は少なくともトランザクション 1 と 2 には合致します。
しかし、これは取引所の仕組みで否定することができます。
取引所は一般に、デポジットアドレスから顧客へのトランザクションを生成することはありません。
報告書に詳細はありませんが、QuadrigaCX のこれまでの膨大なトランザクションを確認した結果も、これを裏付けるとの記載があります。
つまり、顧客向けに生成されたアドレスであり、Bitfinex のデポジットアドレスに対し引き出しが行われた、という可能性は否定されます。
残る可能性は、QuadrigaCX が秘密鍵を使ってトランザクションを生成した可能性です。現時点でこれ以外の可能性はなく、99% 正しいだろうと言われています。
これと同様の調査を進め、Bitfinex と Poloniex、そして Kraken に多額のトランザクションを送信していたことが確認されました。
・もうひとつの発見
Exit Scam(出口詐欺)とも噂されている今回の件ですが、トランザクションを調査していくうち、CEO の Jennifer Robertson が亡くなったとされる 2018年12月9日以降、トランザクションはパッタリと途絶えていたことが分かりました。
各ウォレットに関して最後にトランザクションが生成された日時は、12月8日が最後となっているからです。(自動で生成されたとみられるトランザクションはいくつかありますが)
調査の結果として、各取引所には 649708 ETH が残っていると見積もられています。
転送を行った時点での価値はおよそ 1億ドル、現在の価値でも 9000万ドルに達します。
Bitfinex: 239240 ETH
Kraken: 84248 ETH
Poloneix: 326220 ETH
・事実と考察
著名な人々の意見や、確認されている事実についても追いかけてみましょう。
Coinbase の CEO は分析を行った上で 2/22 に出口詐欺である可能性は低いと言及しており、「取引所としては最古のひとつなので、出口詐欺だとすればもっと早くに発生していたはずだ」、とも述べています。
Binance の CEO は出口詐欺の可能性について言及していますが、詳細については追いかけていないので間違っているかもしれないとインタビューで発言していました。
また、3/13 に CEO の妻 Jennifer Robertson が供述した内容が公開されました。これによると、死亡した CEO Gerald (Gerry) Cotten は、2018年に発生した銀行との紛争において資金が枯渇しそうになった際、ユーザーへの送金を遅延させないために個人の資金を注ぎ込み、ビジネス継続のためにベストを尽くしていたと訴えかけています。
加えて、インドの病院も死亡診断を発行した事実、当時の状況などをパブリックに公開しており、Indiatimes が 2/7 付の記事で報じています。
これらを総合すると、出口詐欺だった可能性は低いと考えられます。
各取引所の資金が 12/9 以降動いていないこと、家族を残していること、異国の病院で亡くなっており状況が克明に記されているからです。
一方、資金の管理が粗雑で、現在まで回復できていない点は、暗号資産の問題点をも浮かび上がらせます。
秘密鍵は、セキュリティを考える上でただひとつの鍵である以上、それをむやみに誰かに渡せないということです。
これについては、NEM をはじめとしたいくつかの暗号資産ではマルチシグなどの仕組みが実装されつつありますし、今後も技術革新が続くことでしょう。
・おわりに
金額の大きさやマーケットへの影響を考えても、これらの資金が無事に QuadrigaCX に戻るよう、各取引所が協力してくれることは間違いないでしょう。
無事に QuadrigaCX の顧客に資金が返還されることを願って、本稿を結びたいと思います。

 

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